こんにちは、税理士・公認会計士の磯谷です。
先日、久々に税務調査がありました。
卸小売業の法人クライアントでしたが、急激に業績が爆上がりしたため「え、どうしたの?」って感じで調査官の方々がお見えになりました。
やはり業績が急変すると異常値エラーみたいになって調査先として引っかかるんでしょうね。
もちろん、中身はド健全だったのでスムーズに終了しましたが。
今回は、そのときに唯一協議に発展した論点を整理しておきたいと思います。
結末は良い意味で予想外でしたが。。
テーマとしては、「建築士に支払った報酬の源泉徴収の要否」です。
今回の状況説明(前提)
今回、テーマになった話の前提として
①小売店舗の出店にあたり建築士に費用をお支払いした
②請求書の業務内容は「工事金額変更差額分」という記載だった
③業務実態はコンサル色が強く経理上は「支払手数料」で全額経費処理
こんな内容でした。
もう少し詳しくいうと、店舗出店にあたり、内外装や備品などの工事があったのですが、その辺りの大きな部分は協力関係にある他社が負担してくれて、当初見積もりから外れた色んな追加費用を後日会社が少し負担したケース。
②の内容記載が「工事金額変更差額分」という、結局中身はなに?という感じの何ともびみょーな表現だったため、調査官の目に留まった感じです。
さて、この支払いは中身は何なのか?
この詳細を明らかにしないと、あるべき処理が確定しないのですが、もともとは協力関係にある会社が進めた店舗工事のうち追加で発生した諸々経費の一部を負担した経緯から、会社としてもあまり具体的な内容を把握できていなかったのが正直なところでした。
税理士が想定した指摘事項
自分としては、デザイン料や設計料として源泉徴収もれを指摘されると想定をしました。
フリーランスの建築士に対する支払いなので、まあ実際の内容はデザインや設計でしょう。。という感じ。
デザイン料であれば、所得税法第204条第1項第1号「デザインの報酬」に該当します。
また、建築士に対する設計料であれば、所得税法第204条第1項第2号「建築士の業務に関する報酬・料金」に該当します。
どのみち、源泉徴収の対象になるのです。
これを指摘されると非常に面倒(不利)なんです。
源泉徴収は支払い側に義務があるので、徴収ももれた場合の追加負担は支払い側の会社にあるんですね。
なので、漏れを指摘された場合はとりあえず会社が支払います。
何が面倒(不利)かというと、その後相手から支払った源泉税を追加でもらえれば良いのですが(もともとは相手の所得税を天引きするものなので、会社が負担する話ではない)、応じてもらえなければ会社が負担するしかないところです。
スポットの取引なら、難しいかと。
当初の調査官の判断:源泉徴収の対象になる!
調査官の判断としては、やはり「源泉徴収の対象になる」との見解でした。
ただし、「工事金額変更差額分」という記載の請求書だけしか無かったので、結局のところ取引内容を特定するには根拠に乏しいとして一旦保留にして頂きました。
最終の調査官の判断:源泉徴収の対象にならない!
最終的には、この取引は源泉徴収の対象にはなりませんでした。
結論としては
「本体工事の追加工事分として、固定資産計上すべき」
とのこと。
こちらとしても取引詳細を内々で確認したかったので一旦保留にしておいたのですが、後日調査官が反面調査で建築士事務所に直接取引内容を照会しており、追加工事的な回答だったとのこと。
最終的な処理はというと
調査官の指摘事項としては
「全額損金経理した当該処理は、一旦固定資産計上して減価償却を通じて損金計上すべき」
という結論になりました。
ああ、そうなの。。?
(え、それでいいんですか?)
自分としては正直そんな感じでした。
経費で落とした分を全額否認されるので追加納税は発生しますが、固定資産計上するということは、その追加納税部分は減価償却を通じて将来徐々に取り返せますので。
結果、いってこいなのでトータルで見れば税負担はノーダメージです。
(延滞税6,000円は発生しましたが)
源泉徴収漏れの指摘として追加納税が発生する方が嫌だったので、良かったです。
※固定資産計上+源泉漏れのダブルパンチの指摘も想定しましたが、一番良いパターンで落ち着きました。
まとめ
今回は個人事業主の建築士に支払った報酬は源泉徴収の対象にはなりませんでしたが、今回の調査で思ったことは
「源泉徴収すべき取引が無いかは結構見られる」
ということです。
たしかに、形式重視なところなので指摘事項としては比較的しやすい部類だと思うんですよね。
最近はフリーランスも増えて、取引も複雑化してますから、この取引は源泉徴収が必要なのか?
ということは、常に注意しておいた方が良いかと思います。
今回はこんな話でした。