社員旅行を福利厚生費として経費に落とす方法と注意点

税金の話

こんにちは、旅行が好きな税理士の磯谷です。

 

さて皆さんは旅行はお好きでしょうか?

会社が福利厚生の一環として、社員旅行に行くことがあります。

 

うまく利用すれば、会社と従業員の双方にとってメリットがあります。

 

ただし、社員旅行をすれば何でも会社の経費になり、従業員もリスクフリーかといえば、そうではありません。

 

税務上、いくつか細かい論点をクリアしないと会社や従業員にとって思わぬデメリットが生じます。

 

今回は、「社員旅行を福利厚生費として経費に落とす方法」について解説したいと思います。

 

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本題の前に~あくまで給与課税の例外的な話として認識しよう~

 

まず前提となる考え方なのですが、会社が役員や従業員に対して経済的利益(=金銭かどうかを問わず、本人が得る何かしらの恩恵)を与えることは、税務の基本スタンスとして受取側は「給与課税」となります。

 

社員旅行は、原則的には「旅行」という経済的利益を会社が与えることになるので、基本的には従業員たちは「給与課税」されることになります。

 

つまり、社員旅行といえど、あくまで実態は「旅行」なので、そもそも本来は個人のポケットマネーで行け、という話なんですね。

 

ただし一方で、従業員が受ける経済的利益が「金額的に少額であれば、そこに対してあえて課税しなくても良い」という「少額不追求という税務上の考え方」があるんですね。

 

社員旅行の話は、この考え方が背景にあることによって存在し、また、これを上手く活用することによって会社や従業員双方にとってメリットに成り得るツールとなります。

 

つまり社員旅行の内容が、税務上「この程度の旅行なら影響小さいから給与課税しなくていいよ」という状態にしておくことが必要となり、それを満たす具体的な要件が、これから解説する細かい注意点になっていくわけです。

 

まずは、その前提をご理解頂ければと思います。

 

それでは、「従業員が給与課税されず、福利厚生費として経費に落とすための要件」について解説していきます。

 

旅行期間に注意

まず、旅行の期間に条件があります。

 

・国内旅行 → 4泊5日以内

・海外旅行 → 現地の滞在日数が4泊5日以内

 

税務的には5泊以上となると、「少額不追求の範囲」から外れてくるという見解のようです。

 

参加割合に注意

次に、参加する人の割合についても条件があります。

旅行の参加人数が全体の50%以上であること


(注)工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要

 

税務的には、全体の半数以上は旅行に参加しないとダメ、という見解のようです。

 

会社の負担金額に注意

上記の「旅行期間」と「参加割合」は、具体的に規定されているのですが、金額については実は明確に「いくらまで」という規定はありません。

 

ただし、過去の裁決事例や国税庁のタックスアンサー等の具体例などを参考に要約すると、以下の金額が目安になりそうです。

 

・1名あたり10万円前後 → 無難

・それ以上 → 高額と判断されるリスクあり

 

※あくまで総合的に勘案したうえでの私見ですので、参考程度に捉えてください。

 

肝心の金額に関する条件が若干ファジーで悩むところですが、税法上明確な基準がないため仕方ないです。

というわけで、金額についてはケースバイケースだと思います。

 

 

その他の注意点

そのほか、細かい注意点がありますので、ざっと解説していきたいと思います。

 

自己都合の不参加者に金銭を支払う場合

諸事情により、社員旅行に行けない従業員も出てくると思います。

 

その場合、旅行の参加に代えて個別に金銭を支給する場合は、給与課税となってしまいます

また、この場合は連動して社員旅行に参加した役員や従業員も全員、給与課税となってしまいます。

 

全員、道連れになりますのでご注意ください。

 

給与課税される金額は、不参加者に支払った金額相当となります。

 

・不参加者に金銭を支給すると給与課税となる

・それは参加者含めた全員が対象となってしまう

・給与課税されるのは、不参加者に支給した金額

 

ちなみに、業務都合で不参加となる場合は、その不参加者に対する給与課税のみとなります。

 

1人社長の会社や家族のみの場合

小規模法人の場合、ひとり社長や家族のみで経営している会社も多いと思います。

その場合は、この社員旅行の給与非課税の規定は適用されず、給与課税となります。

 

国税庁タックスアンサーで、以下のものは適用されないと明示されています。

・役員だけで行う旅行

・実質的に私的旅行と認められる旅行

 

そもそも給与非課税の対象となる従業員レクリエーション旅行ではないということですね。

従業員がいないわけですから、福利厚生の概念から外れます。

 

取引先が同伴する場合

社員旅行に、外部の取引先などを招待するケースがあります。

その部分に関して費用を会社が負担する場合は、交際費となり、原則として損金不算入(=税務上、経費にならない)となります。

 

ただし、資本金1億円以下の会社の場合は最大800万円までは損金算入できますので、結果として交際費という形で経費処理することが出来ます。

 

・取引先を招待する場合 → 交際費

 

行き先や日程など完全に自由な場合

行き先や日程など、全て個人の裁量で自由に行けるような場合は、私的な旅行として給与課税される可能性が高いと思います。

 

そもそも社員旅行のテイを成してないですよね。自由すぎます。

 

成績優秀者への表彰名目の旅行の場合

営業成績などが優秀な人材に限定して、表彰名目で旅行を設定するケースがあります。

その場合は、そもそも従業員全体を対象としていないため、給与課税となってしまうと考えられます。

 

また、成績優秀者の中から抽選で旅行に招待するケースはどうでしょうか?

この場合も、同様に給与課税となります。

 

選定方法を偶発的な形にしても、対象者を成績優秀者として限定している以上、「成績優秀者に対する個別の勤務の対価」としての性質が強くなってしまうんですね。

 

抽選で招待する場合の国税庁の見解は、以下の例示があります。

 

旅行積立金を使って備える場合

社員旅行に備えて従業員から旅行積立金を徴収している会社もあります。

 

従業員が旅行代金の一部を負担するために積み立てておくもので、こうすれば一時的に負担感を感じることなく、計画的に準備することができます。

 

ただし、給与天引きにする場合は、労働基準法第24条の「全額払いの原則」に抵触するため、事前に労使協定等の取り決めが必要だと思います。

 

この旅行積立金は、会社の負担額を調整するのに有効ですので、導入を検討しても良いかも知れません。

 

また、旅行積立金を充当した部分は、従業員が個人的に負担した部分となりますので、会社が代理で旅行代金をいったん全額支払ったとしても、その部分は消費税申告上は仕入税額控除とはなりません。

 

まとめ

会社で社員旅行をする場合の、基本的な考え方と細かい注意点について解説しました。

まとめると、以下の条件をベースに旅行を組み立てると良いでしょう。

 

・国内旅行は4泊5日以内であること(海外は滞在日数)

・参加者の割合は全体の50%以上となること

・会社負担額は1人あたり概ね10万円前後が目安

その他、細かい論点に気を付けて頂ければ、会社は「福利厚生費」として全額経費処理でき、従業員は給与課税されずに双方メリットを受けられます。

 

参考になれば幸いです。良い社員旅行を!

 

編集後記

コロナが続いてますね。

こんな状況下でも、日々楽しいことを見つけて心穏やかに過ごしたいものです。

 

ああ、旅行行きてえ!

磯谷雄大(いそやたかひろ)
書いている人
磯谷 雄大

公認会計士・税理士。
松戸市在住の37歳。
公認会計士として14年、税理士として10年経過。
主に「設立+創業融資+税務」に特化して創業初期に悩むお客様をサポートしています。
現在は「一人で自由に生きる税理士」として活動中。
事業を継続するため、健康を保つために「筋トレ+サウナ」を習慣としています。
あと、よく木更津で釣りしてます。

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