現金勘定が異常に多い場合は注意して~傾向と対策~

税金の話

こんにちは、税理士の磯谷です。いつだってサウナに行きたいです。

 

ところで、あなたの会社の帳簿、現金勘定の残高は今いくらありますか?

 

もし、異常に多い場合は注意が必要です。

 

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そもそも現金勘定とは

現金勘定は、決算書の貸借対照表のうち、資産の部にある項目です。

 

簡単にいうと、「自分の手元にある現ナマ」ということですね。

つまり、自分のサイフや会社の金庫に入っている現金そのもののことで、その場で数えられるものです。

 

この「現金」のほかに、貸借対照表の資産の部には「預金」という資産項目があります。

・普通預金

・当座預金

・定期預金

などですね。

 

これらは、手元に持っている「現金」とは別途、会社の預金口座に入っているお金です。

 

この「現金」と「預金」は、決算書では合算して「現金預金」という項目で表示されていることが通常なので

 

それぞれ内訳を見るのであれば、「試算表」を見ることになります。

 

今回は、この試算表を見たときに、「現金」が異常に多くなっていないですか?

 

というお話です。

異常に多いかどうかの判断は必ずしも一律ではなく、会社規模によりけりですが、

 

一般常識的に考えれば

 

数百万とかになっていれば、既に異常値

 

と思ってもらって良いと思います。

 

つまり

 

手元にある現金を数えた金額と、帳簿上の現金勘定が全然一致しておらず、帳簿残高が異常に多い場合

 

こうなっていると、色んな面で大変なことになります。

現金勘定が異常に増える原因

帳簿上の現金勘定が、手元の実際の現金残高よりも異常に大きくなる原因で最もありがちなのが

 

①預金から纏まった金額を下ろす

②私用に使ってしまう

①②の繰り返し

これが一番多いです。いとあわれなり。

 

例えば、以下のようなイメージです。

 

①期首時点の残高

現金→0

預金勘定→1,500万

 

②毎月、預金から100万ずつ下ろすと、一年後は

現金→1,200万

預金→300万

 

となります。

このとき、引き出した1,200万が、事業に関連する支出のみであれば、最終的に現金残高は0円になっているはずです。

 

これが、たとえば事業に使った支出が500万だけで、あとの700万は私用に使ったという場合、最終的には

①現金→700万(下ろした1,200万-事業支出500万=700万)

②預金→300万

 

となるわけです。帳簿上は。

一見、現金が700万も手元にあるように帳簿上残るわけですが、実際は私用で全て消えてますから、あるわけがないですよね。

 

実際は、手元の現金は0です。

 

つまり、手元にありもしない現金が異常なスケールで帳簿に残り続ける

 

という現象が起きます。

ある意味、架空の資産ともいえます。

現金勘定が異常に多いと何が問題なのか

このような現金勘定が異常に多い場合、色々問題が起きます。

 

税務調査で指摘される

まずはこれ。税務調査で指摘をくらう恐れがあります。

帳簿上たくさん現金残高があると、率直に

 

「そんなにあるんですか?じゃあ数えましょうか」となります。

 

実際に手元のサイフや金庫にあれば何も問題は無いわけですが、実際に手元に無いなら、証明は難しいでしょう。

 

このとき、宙に浮いた(消えた)部分は役員が私用に使いこんだということになれば、

 

①本人→役員給与として所得税課税

②会社→給与ではあるが定期同額給与にならず、法人税課税

 

こういったダブルパンチを食らうことになります。

こうなると、とてもつらい思いをします。

税理士の立場としても、とてもつらい思いをします。

 

銀行の借入審査で不利になる

あとはこれでしょうね。融資で不利になりまくります。

銀行は、業績(=損益計算書)もさることながら、財政状態(=貸借対照表)の中身をとても重視します。

 

このとき、この「現金」が異常に多い場合は、審査に不利に働きます。

 

往々にして、「この異常に残っている現金は既に無いだろう」という判断を下されるわけです。

 

審査上は、その部分は財産は無いものとして数字を置き換えますので、損失が増えるイメージとなります。

 

また、現金まわりの管理がずさんだという印象を与えることとなり、銀行は慎重姿勢となります。

定性情報として、こういった印象を持たれると今後の付き合いが難しくなっていきます。

 

長い目でみれば、こっちの影響の方が脅威ですね。

良くない印象やイメージは、中々変えられないですから。

 

何よりも会社の実態がわからなくなる

上記の2つは、外部に対するデメリットです。

あとは何よりも、帳簿が正確でなくなるので、次第に自分の会社のことが良く分からなくなります。

 

経営はお金を増やす活動なのに、いま自分の会社がどのような財政状態なのか、実態がわからなくなるのです。

これは大きなデメリットです。

 

決算書のうち、損益計算書(=業績)は1期で完結するものなので翌期はゼロにリセットされますが、貸借対照表(=財政状態)は、設立以降の全ての活動の積み重ねの数字ですので、ごまかしが効かないという点で根深い問題となります。

 

自分を見失わず、常に正気を保って頂きたいと切に願います。

現金残高を異常値にしないための対策

こうならないために、どういった対策をすれば良いのでしょうか?

まずは、以下のようなルールを決めましょう。

①事業で使うだけの金額を毎回下ろす

②プライベートの支出をカバーするだけの役員報酬を設定する

 

はい、超普通ですよね!

これが守れれば異常値になりようがないです。

 

それを踏まえて、更に以下の管理運営をしてみてはいかがでしょうか?

①簡潔でもいいので現金出納帳を作る

②現金払いをなくす(クレカ・電子マネー決済にする)

 

①は、簡単なExcelで、日付ごとに入出金をシンプルに記録し、常に残高を明確にしておけばOKです。お小遣い帳みたいな感覚で。

これによって、日々のお金の管理の意識が付くと思います。

 

②は、もはや現金の支払い自体をなくすという技です。

クレカ払い、電子マネー決済にシフトするということですね。

こうすれば、現金の管理要らないですから。

まとめ

お金の管理は、特にひとり社長の中小企業など、公私混同しやすい環境の場合は中々難しいのも事実です。

また、従業員を多く抱える会社の場合も、不正が起きるのは現金まわりからです。

 

とはいえ、現金の管理は経営するうえで極めて基本的なものです。

経営はお金を増やす活動ですから、お金の管理は最低限しましょう、ということでここはひとつ宜しくお願いします。

 

 

磯谷雄大(いそやたかひろ)
書いている人
磯谷 雄大

公認会計士・税理士。
松戸市在住の37歳。
公認会計士として14年、税理士として10年経過。
主に「設立+創業融資+税務」に特化して創業初期に悩むお客様をサポートしています。
現在は「一人で自由に生きる税理士」として活動中。
事業を継続するため、健康を保つために「筋トレ+サウナ」を習慣としています。
あと、よく木更津で釣りしてます。

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