こんにちは、ざるそばが好きな税理士・公認会計士の磯谷です。
今回は、「税理士と公認会計士は何がちがうの?」という問いについて書いてみようと思います。
このまえ久しぶりに聞かれたんですよ。友人に。
「税理士とか公認会計士っていうけど何が違うわけ?まじでいったい何なの?具体的に教えてみなよ」と。
「ざるそば」と「もりそば」って違うよね?そんな感じだよ。まじで何なの?
って答えたのですが、本当は何が違うかご存じでしょうか?
税理士と公認会計士は、同じ会計系のイメージなのでぱっと見分かりづらいんですよね。
果たして「海苔」が乗ってるかどうか程度の違いなのでしょうか?
もう少し、色々違うんですよ。
というわけで、いくつかの視点で思いつくままに書いてみます。
※「ざるそば」と「もりそば」も、海苔の有無以外でも色々違いがあるようですね
違い①「資格の名称が違う」
まず、資格の名称が全然違いますよね。
あたりめえだろうが貴様
と思ったかもしれません。申し訳ない。
しかし、この名称が本質的な両者の違いを表しています。
違い②「仕事内容が違う」
まあ、ここですよね。仕事の中身。
どちらも会計系の分野なわけですが、だからこそ両者の違いがわかりづらいわけで。
税理士の仕事
税理士の仕事は「税務」が中心です。
なんせ「税理士」ですからね。税ですよ。
資格の名前に「税」入ってます。これ以上の説明は不要。
でももう少し詳しく書くと、税理士は税金を計算する仕事ですね。
法人税、所得税、消費税、相続税などの税金を、申告書を作成して計算します。
この「税金」の申告書を作成したり申告することが出来るのは税理士しかできません。
また、税金に関する相談を受けること自体も税理士の独占業務です。
公認会計士は、申告書を作成して代理で税務署に提出(申告)することは出来ません。
公認会計士の仕事
公認会計士の仕事は、「会計」が中心です。必ずしも税務がメインではありません。
この辺りが外部から見るとややこしい要因になっていると思うのですが、会計と税務は目的が違うんですよね。
どちらも背景には色んな法律があるわけなのですが、ざっくりいうと
・税務→税額を正しく計算することが目的
・会計→財務情報を正しく表現することが目的
とでもいいましょうか。。
公認会計士の仕事は、この「財務情報が正しいかどうか」という所がポイントになります。
すなわち、会社の作成した財務情報(決算書など)が正しいかどうかを検証する仕事が、「監査」です。
この監査業務は、公認会計士の独占業務となります。
税理士では監査を行うことが出来ません。
※税理士界では、クライアントを巡回することや帳簿を確認することを「監査」と呼んだりしますが、これとは意味が全然違います。
違い③「クライアントとの立場関係が違う」
税理士と公認会計士は、クライアント(=お客さんとなる会社)に対して仕事をするのは同じですが、「立場が違う・向いている方向が違う」ということです。
どういうことかというと、ざっくりいうと
税理士→クライアントの決算書、申告書を代わりに作る(作る側)
公認会計士→クライアントが作った決算書・申告書をチェックする(確認する側)
イメージ的には
税理士は、会社の中に入って一緒に決算書類を作り上げていくような感じ。
帳簿から税理士が作ることも普通にありますし、作り手といったイメージです。
公認会計士は、会社が作った決算書類が本当に合っているかを外部から批判的に(懐疑的に)見ていく感じ。
帳簿を作成したり、決算書類を作ることは出来ません。自己監査になっちゃいますからね。
どちらも両者の協力関係が前提にないと成り立たない仕事なのは間違いないのですが、立場的に、内部者か外部者かといったイメージはあります。
なので公認会計士の監査では、会社が作った決算書類が間違っている前提で多角的な手法を駆使してチェックしますので、いざ間違いを発見した場合には、会社に修正を求めます。
内容によっては、経営者(取締役などの会社役員)とバチバチに意見対立(揉めたり)もします。
この立ち位置的な違いですが、要は「誰のためにやっているか」ということになるかと思います。
税理士→クライアントである会社のため
公認会計士→クライアントの株主のため
といったことになると思います。
税理士は、決算書類の作成によってクライアントに直接役立つものですが、公認会計士が行う監査はクライアント直接というよりは、その決算書類を判断材料として投資する株主のためにやっている建前なので、決算書類が間違っている場合は会社がどう主張しようが当然に修正を求めるわけです。
株式会社は株主のものですからね。
といってもそれは制度上の建前で、実務上は、どちらも突き詰めればクライアントである会社のためにやっているのは間違いないです。
会社がやっていることを否定して修正を求めるのは、なかなか出来ないものですが、これをしないと会社のためにならない、というケースは多いです。
これが言えるかどうかは、税理士も公認会計士も同じかと思います。
(逆に、いざというときにモノ申せないならタイプ的に向いていないかも知れません。税理士も公認会計士も)
違い④「クライアントの規模感が違う」
これは一般論としては、です。
税理士→個人一般、個人事業主、中小企業
公認会計士→上場会社
税理士は、事務所エリアを中心に個人や中小企業を対象として税務を展開するイメージです。
申告書を作成・申告することがメインとなりますが、規模によっては自分ひとりでも対応可能です。
公認会計士は、独占業務である監査が上述のとおり「株主のため」にやるものですから、必然的に上場会社とのニーズに合致します。
都内の仕事が多く、子会社が大量にあるクライアントは定期的に地方の巡回出張をしたり、会社によっては海外出張も多いです。
また、上場会社を相手にする法定監査の場合は公認会計士1人では実施できず、必ずチームで行う必要があります。
(まあ一人では到底対応できないです。実際は出来る規模の上場会社もありますが、制度上ダメ)
違い⑤「求められる数字の細かさが違う」
これは自分が「しんどい」と感じた一番の要素です。
税理士→円単位の正確性が求められやすい
公認会計士→円単位の正確性なんぞ求められない
どういうことかというと、税理士は「税金を計算する仕事」ですよね。
なので、納税者(=クライアント)からすれば当然、出来るだけ税金が小さくなるようにしたいわけです。
申告書は1円単位で作成されるので、細かいところまで神経つかいます。
納付は円単位で払いますから、当然ですよね。
一方、公認会計士は「決算書類が大体合っているかどうかチェックする仕事」です。
この「大体合っているかどうか」がポイントです。
これは「株主が投資判断を誤るほどの決算書類はダメだけど、逆に判断を誤らない程度の間違いは許容する」という考え方が背景にあります。
なので、1円単位で合っているかなんて全くチェックしません。
クライアントの規模によっては、なんなら1億ズレていてもスルーする(修正しない)ケースもあります。
「重要性の原則」といって、誤りを見つけたら全部修正するのはキリがないので、一定の許容範囲までは無視していいよ、というものです。
自分は公認会計士の監査から税理士業に入ったので、この「重要性の原則」が身体にしみついていたんですよね。
申告書を作っていると、ものによっては1円ズレているだけで異常・かつ原因追及しなければならないことがあると業務が止まってしまうので、求められる数字の細かさでいえば、税理士の方がシビアな気はします。
まとめ
違いを5つ書いてみましたが、疲れたのでこの辺で一旦やめようと思います。
まだ色々ありますけど、「税理士と公認会計士の違いって何?」と聞かれたら、このうちどれかを答えたりします。
でも見返してみると、まあ結局よくわからないでしょうね。。
なので、相手によりますが「大体同じようなもんだよ!」って言って終了します。
本末転倒ですね!申し訳ないです!
今回は、以上です!
編集後記
「もりそば」と「ざるそば」の違いについて
・室町時代に、「蕎麦掻き」といった団子などの形で食されていた
・江戸時代初期に、「そば切り」といって麺の形になった
・そば切りをつけ汁につけて食されるようになったが、つけるのが面倒な江戸っ子が麺の器に直接汁をぶっかけて食べ始めた(「ぶっかけそば」)
・従来の「汁をつける派」と「かける派」(ぶっかけそば)を区別するために、汁をつける蕎麦を「もりそば」と称した
→「もりそば」の誕生
・江戸時代中期、もりそばを竹ざるに盛って出すようになった
→「ざるそば」の誕生
・つまり、両者の違いは当初は「器のちがい」だったそうな。
・他の違いとしては、「海苔が乗っているか」のほか「一番だしを使うか二番だしを使うか」とか「ざるの汁はみりんを入れて少し甘くする」とか色々あるみたい。
税理士と公認会計士の違いと同じで、色んな違いがあるんですね。